シークレットシープ
あたしだったらぜーったい無理、と首を大げさに左右に振る小鳥。
ハーフアップにされている髪が宙を舞う。
「おぐしが乱れるよ、小鳥さん」
苦笑しながら言うと、小鳥ははっと目を見開いて、ポケットから素早く鏡を取り出す。
……すごいなぁ。
本当女子力高い。
私、ポケットの中に鏡なんて常備してないよ。
私の常備品といえば……。
あっ、ドライアイだから目薬は常備してる。
「……そういえば、ふと思ったんだけど。深沢君ってよくこの高校入れたよね。絶対内申点はボロボロだっただろうに」
髪の毛をてぐしで整えながら小鳥は首を傾げた。
「あー……なんでだろうね」
曖昧に笑ってぼかしたけれど。
私は知っている。
彼、相当地頭がいい。頭の回転も速い。
一応国公立大学に進学する人が毎年いるうちの高校。
決してランクが低いわけじゃなくて、受験も狭すぎるとは言わないけど、広いとも言えない門をくぐらないといけない。