シークレットシープ



そう言うと、小鳥はすっぱい梅干しを食べたみたいな顔をしたけど、ゆっくりとうなずいてくれた。

誘ってくれた笹野君は……。



「こんな問題児に付き合わされるなんて、彼女が可哀想だよ」



夜の深い闇を瞳の中に潜め、氷のように冷たい声で、眠っている深沢君に向かってそう言った。

ゾクリと、背筋に何かが走る。


小鳥も、“人気者の優しい笹野君”の雰囲気がいつもと違うことに気付いたのか、笹野君をビックリした顔で見つめた。

……そりゃ、驚くか。

私は委員会も一緒だし、多少なりとも関わりがあるから笹野君が持っている一面に薄々気付いているけど。

笹野君をアイドル視して、遠巻きに見ている女の子たちは気付いてないと思うから。

笹野君が持つ、冷たさに。



「……私は、可哀想なんかじゃないよ。別に嫌々深沢君と関わってるわけじゃないからね」



淡々とそう言うと、もぞっとさっきまで身動きひとつとっていなかった人が起き上がった。


< 20 / 61 >

この作品をシェア

pagetop