シークレットシープ



けだるげな様子で、乱れた前髪をかき上げる。

見えた瞳はしっかりと笹野君を射抜き……。



「ほら……。梨良は、お前が何を言おうと俺を選ぶ」



そう、宣戦布告ともとれるような言葉を放った。

笹野君はその言葉に何も返さずに、私の耳元に顔を寄せた。



「本当、気に食わないよ。あいつのことも……君のことも」



優しい声音で言われたその言葉は、全然優しいものではなかった。

もしも深沢君に同じことを言われたのなら。
「お前、気に食わねぇ」っていつもみたいにぶっきらぼうな感じで言われたのなら、「人が傷つく言葉を使わないの」って叱ってたけど。


こんなに、触れたら電流が走りそうなほど怖い人を叱ることなんてできやしない。


私は静かに、私の席から離れていく笹野君の姿を見送った。



「ねえ、さっき笹野君になんて言われたの!?えっ、もしかして『俺を選べよ……』とか!?そんなこと言われたら悩殺だよ!!」



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