シークレットシープ



『放課後、視聴覚教室に』


そう、漢文の先生が彼に言っていたのが私の耳にも届いたから。



視聴覚室がある1階に降り、ちらりとドアにはめ込まれているガラス窓から部屋の中をのぞく。

視聴覚室の中には、机に伏せている深沢君の姿があるだけ。
先生は見当たらない。


そっとドアを開け、深沢君のもとに静かに歩み寄る。

深沢君が伏せている机の上には、先生が補習課題として出したであろう、試験範囲の内容をざっとまとめた復習プリントが置いてある。

……いいなぁ。このプリント、私も欲しい。
先生今度配ってくれるかなぁ。


「……深沢君、昨日少しも寝れてないの?おうちで何かあったの?」



そう声をかけながら、深沢君の机の目の前にしゃがみこむ。
彼は起きない。

そっと手を伸ばし、頭をなでる。


君は、その暴君さの裏側にどれほどの虚無感を抱えているんだろう。



「私はね、他の誰よりもあなたの役に立ちたいの」



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