シークレットシープ



「ねえ、このイルカ柄のコップ可愛くない?」


何やら星を半分に切って、それを取っ手としてくっつけたようなコップを眺めていた深沢君に、ひとつのコップを指さして声をかけてみる。


いかにも持ちにくそうな取っ手のコップから、視線をイルカの絵柄が描かれているコップにうつして即答。


「お前に似合わねぇ」



……ねえ、それ失礼じゃない?
そんな可愛い柄のコップ、私には似合わないってこと?


「……それなら、深沢君が私に似合うコップを選んでよ」



すこし頬を膨らませながら言うと、「めんどくせぇ」とつぶやきながらも真剣に棚に並べられているコップたちを眺めはじめた。


そして、長く骨ばった指でさしたのはひとつのコップ。

透明なガラスに、羊のもふもふと耳、目、鼻が黒い線と点で描かれたコップ。
……これも、イルカと同じくらい可愛いと思うけど……。



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