シークレットシープ
でも。
「……うん。私もそういうの好き。それ買う」
深沢君が指さすそのコップを手に取ろうとした時、羊の隣に並んでいたコップが目についた。
丸い耳と、しましまのしっぽ、そして少しつり上がった目に、特徴的な柄が、羊のコップと同じようなテイストで描かれているコップ。
「……私が羊なら、深沢君は虎だね」
そう言ってそのコップを指さすと、「は?」と言いながら深沢君はそのコップを手に取る。
まじまじとそれを見つめて、数秒。
彼は私が買おうとした羊のコップを空いている方の手に取り、歩き出した。
「えっ!?深沢君!?」
「買ってくる。お前が羊で、俺が虎」
……それって。
慌てて深沢君の後を追って、隣に並んで顔をのぞきこみながらはにかむ。
「これで、おそろいふたつめだね」
そう言うと、
「何嬉しそうにしてんだよ」
と軽く小突かれた。
その時、キラリと彼の左耳の藍色ピアスが照明にあたり輝いた。