シークレットシープ
「そういえばさ、今日ある委員会の時間。放課後から昼休み中に変更になって良かったね」
「……どうして?」
私を試すように、真っ黒な瞳でじっと見つめてくる笹野君。
あえて理由を聞いてみると、ひょいと肩を上げて目を細めた。
「……ほら、放課後は早く家に帰りたいじゃない?」
「それは確かにそうだね」
「浦部さんも今日は早く帰って家でゆっくりしなよ」
含みがあるような言い方。
靴を履き替えて、横目で私を見てから彼は靴箱の前から立ち去った。
……彼はただの優しい穏やかなだけの人間じゃない。
私は、そう思ってる。
もう朝から疲れた……。
でもここで家に帰るわけにもいかないし……。
小さくため息をついてから、私も靴を履き替えて自分の教室に向かった。
教室に到着すると、笹野君はすでに荷物を片付けたようで友達と談笑している。
私も早く教科書とかを片付けよう。