シークレットシープ
いや、本当に迷惑かけられてると思ったことないんだけどな……。
……その行動やその言動、ちょっと困るなぁって思う時はあるけど。
でも迷惑とか思ってない。
「……じゃあ、今度は私が何か深沢君に奢るね」
「別にいらねーよ」
「えー、受け取ってほしいよ」
そんなやりとりをしつつ、さっき行った雑貨屋さんやカラオケ店が立ち並ぶ大通りをふたり並んで歩く。
すると、向かいから自転車がやってきた。
歩道には結構人がいる。
こういう場所では、自転車から降りて歩いてほしいなぁなんてのんきに思っていると。
「ひかれたいのか、バカ」
そう言って、深沢君が私の肩を抱き寄せた。
驚いているうちに、私がさっきまで歩いていた導線を自転車が走り抜けていった。
「あ……ありがとう……。自転車が、避けてくれるかなって思ってたんだけど……」
「それでひかれてケガしたらどうすんだよ」