シークレットシープ
「梨良」
彼は本当にたまに私の名前を呼ぶから。
普段呼ばれなれてなくて、少し心臓が跳ねる。
「どうしたの?」
「肉、冷蔵庫入れとくか?」
「あー……もうすぐ料理するから置いといていいよ」
そう返すと、無言で調理台に豚肉のパックを置く深沢君。
私、カレーには豚肉派なんだ。
だから深沢君にも付き合ってもらって、今日はポークカレー。
買ってきたものを整理してから、二人並んで調理を始めた。
「たまねぎの皮剥ける?」
「バカにしてんのか」
いやいやいや、バカにしてるわけじゃないから!
そう弁解する前に、深沢君はたまねぎを手に取りもくもくと皮を剥きはじめた。