シークレットシープ
カバンの中の荷物の一部を、教室の後ろにあるロッカーに片付けている時だった。
しゃがみこんでいる私の背中に重みが加わる。
「梨良ー、おはようー」
こんな風に私の背中に乗ってくる人はひとりしかいない。
顔を見なくても名前がわかる。
「小鳥、おはよう」
そう言うと、背中にかかっていた重力は消えて。
振り返ると笑顔の黒髪ハーフアップ美少女がひとり。
水野小鳥。
中学から一緒の、私の親友。
「今日もあたしより梨良の方が来るの早かったー。さすが、優等生の浦部梨良さん」
「私より先に教室にいた人、いるよ」
苦笑しながらそう言うと、小鳥は
「あのね、春に期間限定で発売されて即売り切れになって買えなかったアイシャドウが再販されてたの!!」
なんてスルリと話題を変えた。
手品みたい。
普段のんびりしてるのに、会話の流れを変えるのはほんの一瞬の間にやってのける。
話題変更はいつも小鳥の役目。