シークレットシープ
お皿運ぶくらい、私にとってはなんてことない作業なのに。
「……将来、いい旦那さんになれるね」
カレーをテーブルに置く後ろ姿を見つめながらポツリとそうつぶやいた。
荷物を抱えながら、可愛い奥さんと並んで手をつなぎ歩いている深沢君の姿がふいに脳裏をよぎり、少し胸がちくりと傷んだ。
「おい、何立ち止まってんだよ」
「あっ、なんでもない。今行くよ」
あの、針で心臓をさされたような小さな痛みをごまかして、私は笑った。
ふたりでいただきますをして、それぞれサラダだったりカレーを食べたりしながら取り留めのない会話をしていると、ふいに深沢君が私のことについて聞いてきた。
「お前んちの姉さん、出てってどのくらいなんだ?」
「んー……今年の夏で、丁度1年くらい?」