シークレットシープ
「……あいつは、何にするんだろうな」
「あいつって?」
「浦部さんのお荷物」
……散々な言い様だけど、“あいつ”が誰を指すのか分かった。
笹野君、本当にあの人と相性が悪いんだね。
「私には、私にとってお荷物になる人なんていないよ」
そうポツリと言って、座ったままだった椅子から立ち上がった。
すると、笹野君も立ち上がり私の顔を覗き込んできた。
なぜか、少し嬉しそうに。
「やった。俺の言葉が浦部さんの感情、動かした」
「……え?」
何を言っているのかよく分からないんだけど……。
「浦部さんはさ、喜怒哀楽をあまり人に見せないから。今、怒ってるのを見れて嬉しい」
あまりにも無邪気な表情でそんなことを言うものだから、拍子抜けしてしまった。
「……わざと怒らせるのとか、今度からやめてね。怒るのって疲れるから苦手なの」