シークレットシープ



廊下に響く、英語の先生の声。
きっとこの声は下や上のフロアにも聞こえてるだろう。

反響して震える声に、深沢君はチッと舌打ち。



「気づきやがった」


「いや、逃げ出すのがいけないんだよ……?」


「逃げるぞ、梨良」



そう言って、深沢君は私の手を握り、ぐっと引っ張った。

私より体温の低い、少し冷たい手。
突然触れられて、私の手は深沢君の冷たい手の熱を奪われるどころか、少し熱くなる。



「なんで私も逃げるの!?……ごめんね、みんな。お菓子ありがとう。またお返しするね。笹野君、委員会の資料、邪魔だったら私のロッカーに突っ込んでていいからね!」



みんなにそう言い残して、私は深沢君と教室から出て、廊下を駆け出した。



「いた!深沢ぁ!浦部を人質にして逃げるなぁ!」




ほんとにそうだよ!
なんで私はちゃんと課題出してるのに先生に追いかけられないとなの⁉



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