シークレットシープ
あの頃の彼はすごかった……。
去年のことを思い返していると、始業のチャイムが鳴った。
「よーし、チャイム鳴ったからホームルーム始めるぞ。日直、あいさつ頼んだ」
いつもと同じ先生からの声かけで、ホームルームが始まった。
今日の伝達事項は、昼休みにある委員会があるってことくらい。
他には特に何もなく、先生の雑談を聞いているうちにホームルームの時間が終わった。
ホームルームが終わってから少しして、「浦部ー」と先生に手招きされて。
教卓の前まで行くと。
「新しい数学の問題集が届いたんだ。教室に運ぶの手伝ってくれないか?」
そんな頼みごとをされた。
断れるはずもなく、私はうなずく。
こんな時、いつも笹野君が颯爽と現れて「自分も」と名乗り出てくれるんだけど……。
どうやら今は教室にいないみたい。
私ひとりの力で大丈夫なのかなぁ。
若干の不安を覚えつつ、私は先生の後に続いて教室を出た。