ねぇヒーロー、名前を呼んで
暗い過去に耽っているとクラスのみんながいない事に気がついた


「あ、移動教室か」


チャイムはそろそろなりそうだけど、どうしても移動する気になれなかった


「このままサボっちゃおうかな」


席をたって窓を開ける


暖かい春の風が桜の花びらを運んでいる


とても心地いい


ずっとここにいたい


ずっとこの気持ちでいたい


不思議と穏やかな感情になっていた


私は窓から見える正門をずっと眺めていた


5分だった頃だろうか


人が走ってくるのが見えた


よく見てみると男の子だ


きっと遅刻して走ってきているのだろう


「はやい…」


その子は鬼の形相でめっちゃくちゃ必死に走っている


次の瞬間
その男の子は物凄い勢いで転んだ


「えっ!!」


いきなりの事に私は私は思わず身を乗り出して声を出してしまった


するとその声に気づいたのか彼も上を向く


彼と目が合った瞬間


ブワッ!!と春の風が強く吹いた


ドキッと胸が弾んだ


思わず目を瞑ってしまった


目が合った??


どうしよう


もう一度確認してみようと目を開けるとそこには彼の姿がなかった


「え、えぇ?!」


なんで?なんでいないの?


もしかして私が見てたのってお化け…?


ドドドドド!!


教室の外から誰かが走ってくる音が聞こえた


そしてこの教室の前で止まり、思いっきりドアが開いた


ガラッ!!!


時が止まった気がした


時計の針の音も聞こえない


そこにはさっき正門でころんだ彼が息を切らしながらこちらを見つめていた


「…お前!!」


叫んだ彼の声にびっくりして声も出なかった


見つめているとまた彼が口を開く


「橘が言ってた転校生か!!」


目をキラキラさせながら叫んできた

「…え?」


怒られると思ってたから拍子抜けした


目を丸くしていると


「そうかそうか!!俺は篠原朝一!よろしくな!お前は?」


「塩崎柚宇」


不思議と彼からは目が離せない


人と目を見て話したのはいつぶりだろうか


「柚宇か!」


朝一はまたよろしくな!といい手を差し伸べてきた


握手をしたいのだろうか


でも、私は友達なんていらないんだ


1人でいいんだ


朝一は不思議そうに私を見つめる


「なんだよ〜握手くらい、友達だろ〜?」


ピクッと友達というワードに反応してしまう


私は朝一のことを睨みながら


「私はあなたと友達ではないし友達になるつもりも無い」


そう静かに告げ教室を出ていった





















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