うるせえ、玉の輿。

そんな女々しい服ばっか持ってるなよ。と言いたかったけど飲み込んだ。
 業平がどれだけ儲かっているのか知らないけど、本人が稼いだお金は本人の自由だもんね。
 人のお金を殴って奪う父親よりは真っ当だ。

 外車を走らせ、去っていく。その車が去ってから、私は恐る恐る冷蔵庫を開けた。

「……これ、はっ」

信じられない中身に、口を覆う。
プリンがある……っ。
三つで88円の特売プリンじゃない。

これはコンビニとかに売ってる150円以上のプリンだ。

私は知っている。冷蔵庫のプリンは、勝手に食べたら恋人同士は必ず喧嘩するのだと。
そもそもこんな高級なプリンを私は食べたいとは思わない。

「あ、らっきー、もやしと玉子がある。オイスターソースで炒めよう」

ラッキーラッキー。
でも圧倒的に野菜が足りてない。やっぱ庭に早く野菜を植えよう。
ミニトマトと、ピーマンと人参は万能だから絶対でしょ。
枝豆も高いから育てたいし、きゅうりも。
そうすると畑の中身をどう分配しようかな。

三分で出来上がった玉子もやしを皿に乗せながらガスの元栓を探す。

は、よく見たら電気だ。この家、いつの間にかオール電化にしてやがる。

こいつ、停電したら全滅なのに何してんだ。

「あれ、車がないけど居るのかな?」

家じゅうの必要ないコンセントを抜いていると、力が抜けそうな声が聞こえてきた。

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