うるせえ、玉の輿。


「業平? 手短かに頼むよ。次の肉が焼けるまで三分だ」
『ひ、やっ だ、だめっつ』
「!?」

業平が切ない声を上げている。

「どうしたの?」
『も、だ、だめっ さっきから、あっああっ』

「どうした!?」

『彼がっっ や、休ませてっっく、くれなっつ』

「子作りか!?」

驚いてトイレの鏡の前で大声を出してしまった。
もしかして、電話の向こうでは、ジョージさんと業平が、あんなことやこんなことをしてる?

「えっと、若さが足りないのかな。お前、ダイエットとかしてたからねえ。ジョージさんどうよ」
『ああんっ た、すけっ』
「えー。だって、業平はジョージさんと両想いになりたかったんだし、既成事実作れてよかったじゃない」
『麻琴ちゃん……っ』

ぐすっと鼻の音がする。業平が泣いているのが分かった。

肉。業平。肉、業平。一か月分の肉、業平。
業平の恋、肉。肉からの業平の恋。肉の恋。
「……どこにいるの?」

『駅前のっっホテル、の、グランツェ』

高級ホテルだ。安い肉の匂いを漂わせた私が入っていいホテルじゃない。

『の、前の……ジム』

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