うるせえ、玉の輿。



「人が嫌がることをしてはいけませんって、小学生でもわかってるよね。これって、偽善の押し付けよね。業平がジョージさんに嫌われたくなくて我慢しちゃってるのも気づかないほど、押し付けてるよね」

「ああん。麻琴ちゃん……私」

「可哀そうに。ほれ、立って。歩ける? あーゆう系は駄目よ。恋人が無理に合わせてるのに気づかず振り回してくる。駄目よ、駄目」

肩に腕を回して立ち上がる。重いけれど、なんとか業平を抱えて立ち上がれた。
肉のパワーだとしたら感謝だ。

ジョージさんに嫌われたくなくて、必死でジムで頑張っただろうに、途中から限界なのに気づいてもらえず此処までボロボロになって、本当に可哀そうだ。

恋愛って、見ているこっちは愚かで呆れてしまう。
けど、本人はこんなになりながらも真剣に頑張っているんだろうね。

「麻琴ちゃん……ごめんね」
「肉のことなら許さない」
「いや、ふふふ。ごめんなさい」

意識がはっきりしたのか、急に軽くなった。

「麻琴ちゃんが来てくれるかなって、自分をギリギリまで追い詰めてみたの」

偉そうに言うものの、足はまだ生まれたての小鹿のようにがくがくしていた。
「私の狙いは、これだったのよ」
「……」

とりあえす、弱ってる業平に今は飛び蹴りしない。
けど、元気になったら蹴ろうと思った。
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