うるせえ、玉の輿。

――

コース料理が運ばれてきた。
お肉のいい匂いがする。ソースの甘辛い匂いが充満している。
天国の香りが部屋中を包み込んでいるのに、私は業平が辛いというだけで地獄のように感じた。

「業平……業平……」
「あら、なんで貴方が泣いてるの。丞爾くん、追いかけなかったの？」
ソファに突っ伏していた業平が驚いて駆け寄ってきてくれる。
違うのに。傷ついて辛いのは業平の方なのに、どうして私に優しくしてくれるの。

「私は、ジョージさんなんて最初からどうでもいいし。お肉と、業平と、業平のおじちゃんとおばちゃんが大事なんだもん」

ジョージさんに嫌いって言われて倒れていた割に、業平はケロッとしていたので、コース料理をテーブルに並べてみた。

「でも、変。私たちが愛し合ってるって、変な勘違いだよね」
「……そうね」

業平はソファに座ると、ワインをグラスに注いで私に手渡す。
……変なのは業平もだ。私がアルコールだめなのは、昔から知っているのに、はじめて渡された。

業平も同様しているのかな。

「私じゃ駄目だもの。でも丞爾くんみたいに純粋な子なら、確かに麻琴ちゃんはいいわ。幸せになるって今日、確信した」

グラスの中のワインを揺らす。
赤い、高級そうな深い色のワインを回す。
業平の顔は、辛そうで、痛々しかった。
あんなに私にジョージさんの何が好きとか、可愛いとか、良い子とか必死で話してくれていたのに。
今は、彼の気持ちを知って、私に勧めようとしている。