うるせえ、玉の輿。



可愛いハムスターと思ったのにグリズリーベアで驚いた。
いや、顔がもしかしたらイケメンなのかもしれない。

けど私は、業平と業平のお父さん、大家さんのおじいちゃんや職場のおじいちゃんたち以外の男の人は基本的に怖い。
なので顔を見ずに逃げ出してしまった。

「あの、申し訳ないんですが玄関に置いてあるクッキーとお茶をもらって、サインを偽装して荷物を置いて帰ってくれません?」
「偽装!?」
「あ、大丈夫です。私が書いてって言ったので」

こんなことを頼むなんて失礼だったと思うけど、可愛い男の子だったら大丈夫だったんだよ。
業平が運命の相手とかいうから、つい警戒してなかったんだ。

「あの、虹村さんから聞いてます。偶に思い出したように男性恐怖症になる幼馴染が荷物を受け取ると」
なんと雑な説明をするんだ、業平。
「荷物を置いたら玄関の外で待ってるので、サインいただいていいですか?」
「え、でも」
「虹村さんが、あなたに社会勉強させてって、俺を指名してくれたんで。さ」

パタンと限界が閉まって『いいですよ~』と扉越しの声が聞こえた。
本当、一瞬で逃げ出して申し訳ないが、めちゃくちゃいい人だ。
業平の運命の相手って。

玄関に大きな段ボールが置いてあって、責任者の部分に『津津村』と書かれていた。

「津津村さんって言うんですね」


< 12 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop