うるせえ、玉の輿。
「麻琴ちゃんは、丞爾くんどうかしら」
「全く興味ない。このお肉、美味しい」
「彼を傷つけちゃったんだから、追いかけなきゃいけないんだけどね」
「いいよ。勝手に勘違いしたのはジョージさんでしょ」
恐る恐るナイフを刺すと、お肉が柔らかくて簡単に切れて感動した。
この高級なお肉、一切れで焼肉食べ放題のコース代ぐらいの値段だ。
「あながち、勘違いでもないわ。私も、貴方が玉の輿に乗れなかったら、責任をもって幸せにしてもいいぐらいは愛してる」
フォークで刺したお肉は、口にいれたらソースと共に蕩けた。
そんな幸せな瞬間に、ワインの匂いに酔った業平にそんなことを入れて笑う。
「私で妥協しないでよ。業平なら、すっごいいい男なんだからちゃんと好きな人と両想いにならないと」
「……そうね」
一瞬、悲しそうな眼をして、すぐに伏せてワインの香りを嗅ぎ出す。
辛そうな業平の顔は、痛々しくて見てられなかった。
同性を好きになって、それが成就することって、メチャクチャ難しいのかもしれない。
難しいし伝えるまでが異性と違ってハードルが高いんだろうし。
だから、今、どれほど業平が傷ついてるかなんてきっと恋愛をしたことない私には理解してあげられないんだ。