うるせえ、玉の輿。
食器とフォークがカチャカチャと鳴る。
静かで、少しだけ寂しい夜。
目の前にいる業平が、私の世界の中心なんだなって改めて気づかされた。
誰かを傷つけないと知れない痛みは、愚かだ。
あの場で、ジョージさんを追いかけなかった私は、きっと世界で一番醜悪な人間なんだろうな。
結局その日は、スイートルームのベットで二人で眠った。
普通の男女だったら、何かしらそこで間違いが起こるはずでも、私たちの間にそれは起こらない。
すっぴんでも私より綺麗で、お肌なんて透き通るほど美しい業平は、眠っているお姫様だった。
彼を起こしてあげる王子さまは、私のせいで現れなくなった。
謝罪の意味を込めて、頬に口づける。
誰よりも幸せになってほしい相手の、誰よりも大切な人を奪ってしまった罪悪感は、起きても拭うことはできない。
せっかくおじさんおばさんから婚姻届けはもらったけれど、それを私は書く権利なんてなかった。
私がいなくなれば、もしかしたらジョージさんとワンチャンあるかもしれないので、私は業平の前から消えることにする。
それが、あの人も業平も傷つけない方法だと理解したからだ。