うるせえ、玉の輿。
Side:津津村 丞爾
Side:津津村 丞爾
一昨夜の話を思い出そうとすると、胸が抉れるので今は蓋をする。
ただ、驚いたのは俺自身知らなかった両親の話と奨学金の話だろうか、
俺には父親違いの弟が三人。まだ下は幼稚園生から小学二年生。
この三人の父親もバラバラだと、あの俺を調べ上げていたファイルに載っていた。
母は心も体も弱い人で、人にすぐ騙されるし、再婚を考えて無茶な行動ばかりする人なので、こうなった今の状況を責めるつもりはない。
奨学金も、当時の学費とあと生活費にちょろっと使っていたのがバレていたも驚いた。
あのファイルを作成した人は何者なのだろう。なぜ奨学金のことまで知っているのか。
俺も知らなかった俺のことに、驚きを隠せない。
虹村社長は、ご両親が資産家で、立派なお屋敷に住んでいて、それなのに威張ったところもなく素敵な人だし、俺にも優しいし尊敬しかできない。
今は、彼女の無垢な愛情を全身に浴びて、羨ましくもあるけど、それだけだ。
まるであの人に、俺はふさわしくないと見せつけるかのようなファイルだったな。
「津津村、今日の時間指定先の把握は大丈夫だろうな」
「あ、はい。問題ありません」
色々とあったものの、だから自分の担当地域を変更したいとか言えるはずもなく、今日も通常通りの仕事だ。