うるせえ、玉の輿。


虹村社長は毎週週末にうちに発送をお願いしているし、荷物も頻繁に届く。
ので、行かないといけない。会社で契約してくれている太いお客だし。

でもトラックに乗り込み、ミラー越しに自分を見て首を傾げてしまう。

鍛え抜かれた身体。日焼けしてがさがさな肌。可愛いとはいえない、おじいちゃんおばあちゃんからは『醤油顔』とモテるこの顔。

どこをどうみても、女性にもモテないことの顔を、虹村社長は好きだと知る。

どこかだ?
あんな、下手したら女性より綺麗な社長が俺を?

俺が持っていないものすべて持っていて、あげく可愛くて家庭的で、献身的な幼馴染の女性もいる。

俺なんか、眼中にはいるはずもない。

そりゃあ話し方とか奇抜なファッションだから、男性が恋愛対象なのかなって思う場面は多々あったけど、俺みたいな筋肉質で汗臭そうな宅配員をそんな目でみてるとは思えないじゃないか。

「う……会社、行きにくいなあ」

運転しながらも、津津村社長の会社に行くのが億劫だった。

酷い言葉も吐いてしまったし。

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