うるせえ、玉の輿。


大嫌いって言った俺が、幼稚にみえるほど虹村社長は大人な対応だ。
でも、あれは俺は悪くないと思っている。

二人が自分の気持ちに気づいていないのが悪い。

「あのね、……じつは麻琴ちゃんが家を出て行ったの」
「え、家出ですか?」

「そうだといいんだけど、あの子、思い詰めたら何をするかわからなくて」

虹村社長は化粧の裏に披露した顔を覗かせている。
本当に心の底から心配して、探し回ったのかな。

「俺、今日たぶん仕事で会社寄るので見てきますよ」
「会社にも一週間有給取ってるそうよ」
「……ええ」

益々、麻琴さんの動きが分からなくなってしまった。
こめかみを押さえながら、虹村社長も深くため息を吐く。

「もし彼女を見つけたら、私に連絡くれない? 刺激したら駄目だから貴方は話しかけないでほしい」
「っわかりました」

つまり探してほしいではなく、刺激しないよう関わるなって釘をさしたかったってことだ。

麻琴さんにそれほど嫌悪されているのは少し堪える。

< 125 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop