うるせえ、玉の輿。
大嫌いって言った俺が、幼稚にみえるほど虹村社長は大人な対応だ。
でも、あれは俺は悪くないと思っている。
二人が自分の気持ちに気づいていないのが悪い。
「あのね、……じつは麻琴ちゃんが家を出て行ったの」
「え、家出ですか?」
「そうだといいんだけど、あの子、思い詰めたら何をするかわからなくて」
虹村社長は化粧の裏に披露した顔を覗かせている。
本当に心の底から心配して、探し回ったのかな。
「俺、今日たぶん仕事で会社寄るので見てきますよ」
「会社にも一週間有給取ってるそうよ」
「……ええ」
益々、麻琴さんの動きが分からなくなってしまった。
こめかみを押さえながら、虹村社長も深くため息を吐く。
「もし彼女を見つけたら、私に連絡くれない? 刺激したら駄目だから貴方は話しかけないでほしい」
「っわかりました」
つまり探してほしいではなく、刺激しないよう関わるなって釘をさしたかったってことだ。
麻琴さんにそれほど嫌悪されているのは少し堪える。