うるせえ、玉の輿。
Side:穂村 麻琴
「うう。寒い」
心も懐も、身体も寒い。
以前ルームシェアしてた民家は、戻れば絶対に業平に見つかる。
でもウィクリーマンションは高い。引っ越すならがっつり決めなきゃいけない。
会社には、親代わりにしている二人の看病に田舎に里帰りと嘘をついたら、今までの有休を使ってしまいなさいって、10日も休みをくれたから時間はある。
時間だけはある。
この時間を有効に使って、私は業平の周りから消えないといけない。
仕事場は気に入っているけど、業平の邪魔になるなら変えないといけない。
なので、午前中は不動産屋で賃貸を見に行き、午後は職業を探しに職業訓練所へ。
職は、金になるなら何でもいいけど、男が少ないか今みたいに年配の人ばっかがいい。
「はあ。本当に田舎へ行こうかな」
おじさんとおばさんと、一緒に畑を耕して自給自足の生活の方がいいかもしれない。
ああ。せめて業平の子どもを妊娠してから行っていたら、あの二人に喜んでもらえたのにな。