うるせえ、玉の輿。
「自殺?」
「自殺でしょ。こんな海の沖までふらふら歩いて、自殺以外に何があるんですか!」
「釣り」
「ないで――釣り?」
「夜ご飯を釣るために海に来たんですけど、どいてくれます?」
私の上で今にも泣きだしそうだったジョージさんは、一気に沸騰するように真っ赤になると私から遠ざかりへなへなと座り込んだ。
「釣り……」
「どうみても釣り場所でしょ。それに、私が自殺するような人間にみえます?」
首を傾げた私に、彼は両手で頭を掻いて、耳まで真っ赤にしている。
「見えませんよ! 見えませんけど、貴方は女性だ!」
「まあ、そうですね」
「誰かが守ってあげないと、必死で一人で生きようとする、不器用な女性じゃないですか」
むくっと起き上がって、私は正面からジョージさんを見た。
とても綺麗な瞳。私みたいにクソみたいな、人生の中、人間不信なんてならず綺麗なコップの中の綺麗な水だけをもらって太陽の下で生きてきたような、綺麗な目。
泥水が当たり前で、日陰から動けなかった私とは大違い。
「焦って取り乱した俺が、おかしいですか」
じっと見つめる私に、彼は拗ねたように言うので首を振る。
「ジョージさんは綺麗な瞳だねって思ったの」
ぼんっと発火するように真っ赤になったかれは、確かに可愛い。