うるせえ、玉の輿。
彼は何を思ったのか、腰に巻いていた機械に何か入力するとレシートみたいなものが出てきたので、私の額に張り付けた。
「着払いの荷物扱いです」
「ひどっ」
「ひどいのはどちらですか」
額にあて先を貼られた私は、ジョージさんに手を握られ、来た道を帰っていく。
彼は途中で投げ捨てた財布やら靴やらを拾いながら、釣り場のおじさんに事情を説明して謝ってくれていた。
不器用な人。
でも誰よりも温かい人。
勇気があって正義感があって、そして優しい人。
お礼さえ言っていない私に、微笑んでくれる人。
横顔を見上げながら、そう思ってしまう。
まるでリンゴを食べる前の、パンドラを開く前の、世界のどこかに必ずある悪意を知らない無垢な人間みたいだ。
「ジョージさんは、素敵な人ですね」