うるせえ、玉の輿。


誰も汚していない、綺麗な良い人。

この人を汚してみたい。
綺麗な水に、私が混じったら濁る。

真っ白なキャンパスに、私が最初に真ん中に黒い絵の具で色を塗りたい。

汚してみたい、この人を。

そう思ってしまったんだ。

綺麗でいい人で優しい人。
私を綺麗と血迷うこの、世間知らずの美しい人。

「綺麗じゃないよ」

酸いも甘いもかぎ分けて、じゃない。汚い油の浮いた海の中、心まで汚れていた私はそう思った。

信号待ちで止まるトラック。
未だ、私が隣にいるから真っ赤な彼。


初めて私から触れる、リビドー。
レバーに乗せていた、手の上に自分の手を乗せて、私の方を向いた彼の唇に自分の唇を寄せる。


業平の顔が浮かんだけれど、私はとっくに業平を傷つけているので罪の意識は彼方へと飛んで行っていた。


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