うるせえ、玉の輿。


リビングのドアごしに伝えると『失礼しまーす』と元気な声とともに、彼が入ってくるのが分かった。

「わー、クマ柄の入れ物かわいらしいですね!」
 嬉しそうな声に、全く嘘が感じられない。

「ありがとうございます。またフラミンゴ宅急を御贔屓お願いします」

「い、イエス、イエス」
「失礼します。わー、おやつ、おやつ」

分かるわ。私も初任給で買ったおやつのケーキは、ベッドの上で組体操しながら喜びの舞を舞いながら食べたもんね。

トラックの発進音が聞こえて、窓から覗く。
悪い人ではなさそう。
業平みたいに、お人よしにはあれぐらい可愛い感じの人がお似合いなのかもしれない。

おじさんとおばさんに言ったら分かってくれないのかな。
業平が幸せなのが、一番いいことじゃない。

あ、でもすっごく筋肉マッチョな感じがした。
もし彼がDVする人なら、貧弱な業平は勝てない。

彼が暴力を振るわない人かどうかちゃんと確認してから報告でも遅くないのかもしれない。

それに私もルームシャアしていた家を引き払っちゃったし。

色々考えていたら、携帯が鳴った。
タイミングよく業平からだった。
『麻琴ちゅわああああん。彼、どうだった? 可愛かった? やばいでしょ? 心のチンコが濡れちゃうでしょ?』
「……」

発言が気持ち悪かったので無言で切ると、速攻でかけ直してきた。

『怒らないでよ。可愛かったでしょ?』
「胸のフラミンゴのマークが、ぱつんぱつんに伸びてた」
『でしょう、でしょう。あれが一番大きいサイズなんですって。私のクッキー喜んでくれてた?』
「わーいって言ってたよ」
『きゃーっ』
女子か。

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