うるせえ、玉の輿。
「え……そんあ、嘘、でしょ」
業平が私の方を見る。
「粘膜接触って、あなた、ゴム持ってなかったの?」
慌てた業平が、財布の中から童貞みたいにゴムを取り出してきた。
「これ、サイズが合わなかったやつ、持っていていいから、ね?」
「キスってゴムつけてすんの?」
こんな、圧迫されて伸びそうにない避妊用具を渡されても、使い方が分からない。
キスするときに相手の口をゴムを結んで、タコみたいなくちにしたらいいってことか。
「あら、セックスしたんじゃないの?」
「してないよ。キスしたの、キス」
「あらあ、……お赤飯レベルかしら」
「普通の家庭は、キスで赤飯炊くんだね」
私のバックを業平が自然に持つと、『私の家では、特に』と話を続けながら家のドアにカギを差し込もうとして、もう一度ジョージさんが叫んだ。
「俺は本気です。逃げないでくださいね」
鼻息荒いジョージさんを見て、私は業平を見る。
「私から、キスしちゃった。それでも家に戻ってもいいの?」
綺麗な業平の顔が、固まっていく。
「業平の好きな人、私が汚していいの?」