うるせえ、玉の輿。
口を押えたジョージさんが、心なしか顔を真っ赤にしているような……。
私の時は、高速道路に乗ったり道を間違えたり、ハンドルに頭突っ込んだくせに、なんで業平にはそんな乙女な反応なの。
「もう一回、わたしともキスして、ジョージさん」
「え? も、いっかい?」
「きゃ、間接キス」
私がとびかかる前に、助手席が閉められた。
そしてエンジンをかけて逃げようとしている。
「……私の時と反応が違いすぎる」
「あら、じゃあ私の時の方がいい感じ?」
「反応は、業平の方がいい気がする」
気に食わない。襲ってやる。
もっと可愛い反応が見たいんだよ、私は。
「さて、帰りましょう。麻琴ちゃんがいないから、心配で栄養剤しか喉を通らなかったのよ」
「……ごめん」
キスの件は有耶無耶にされ、代わりにドアを開けた玄関の前で業平に腰を引き寄せられる。
「あの、本当にいいの?」
私は、業平の好きな人にキスをした。
業平が大切にしている、ジョージさんの純粋な部分を汚したいって衝動から、キスをした。
それは業平みたいな綺麗な感情ではない。
そして私の気持ちはどこへやら、ジョージさんは業平に宣戦布告。
私のせいで、業平の純粋な恋が、壊されたのに。
「やっぱ私、どっか家の庭にテントとか」
「麻琴ちゃんがいなくて寂しかったわ」
引き寄せられた手に力が入り、業平が私の頭に口づけた。
「私は、麻琴ちゃんのことを大事にしてきたし、離れるなんて絶対に嫌よ」