うるせえ、玉の輿。
「ないなら、私たちが最初に幸せになればいいのよ」
昔の王様は子孫を残すために沢山の奥さんを、同じぐらい大切に愛しましたってか。
その中でもさらに寵愛されてたの、いなかったっけ。
素揚げした茄子とレンコン、湯煎して皮をむいたトマト、ピーラーで固い茎を剥いて柔らかくしたアスパラガス、茹でたオクラ。冷凍していたカレーが、たちまち夏野菜カレーに変身して、私はお皿の上で輝く野菜の方に目をやる。
こんなにおいしそうに育てて、おじさんとおばさんは子供だけでなく野菜も育てるのが上手なんだな。
「さ、食べてちょうだい。心配でご飯作っても何も食べられなかったんだから」
「……私、とっくに成人してるし。物心ついた時から自炊してるんだけど」
「そうじゃないの。一人でも生きていけるって、強がってほしくなかったし、自分がいなきゃいいって思ってほしくなかっただけよ」
優しい。さっきまでジョージさんを汚してしまいたいと欲望にギラギラしていた私を、浄化してくれる優しい人だ。
「なんで」
その言葉を言おうとして、慌てて茄子を押し込んだ。
どうして私たちは、恋人になれなかったんだろう。
その言葉を言えば、終わる。
から私は飲み込んだ。