うるせえ、玉の輿。
発言が全く女子だ。
女子のコイバナを聞いているような気分だ。
「でも私はまだ認めてません。あんな大きな人、怖くて顔も見れなかった」
『やだー。偏見、偏見。彼はそんな子じゃないのに』
「少しでも業平に酷いことをする素振りがあったら、絶対に認めないからね。いい? いくら素敵でお金持ちで、雨露防げる家を持っていてもね、暴力をふるう男はくそ。ゴミ。うんこ以下よ」
『もーう。女の子がそんな下品な言葉、使っちゃダーメ』
電話の向こうで『しゃちょー』と忙しそうに声をかける声が聞こえてきた。
そうだった。この人は今、仕事中だった。
お金を稼ぐ時間を邪魔しちゃだめだ。
「じゃあ、お仕事頑張ってね」
『ええありがとう。そうそう、冷蔵庫にプリンが入ってるから食べて頂戴』
「は!?」
『あなた、コンビニのプリン、食べたいけど買うの躊躇してたでしょ』
「業平、好き。めちゃくちゃにして!」
コンビニのプリンって高いから遠巻きにしか見ていなかったのに、覚えていてくれたんだ。
まあ私は興味ないとか強がっていたけど、くれるものなら病気以外ウエルカムだ。
『ふふ。もっと自分を大事にしなさい。帰りにケーキも買って帰ってあげる。いい子にしててね』
ちゅっとリップ音が聞こえ、そのまま私の返事も待たずに電話が切れた。