うるせえ、玉の輿。
「お前、普段は変態で馬鹿でも仕事中は格好いいだろー。どうしたんだよ」
「だから麻琴ちゃんが見つかったけど、どこか行ってしまいそうで不安ってことよ。家に盗聴器? 麻琴ちゃんのカバンに発信機?」
「こっわ。お前の思考回路、こっわ」
秋物のコスメで、ブラウニー色だのチョコブラウンのアイシャドウが、今朝飲んだお味噌汁の色に見えてきた。
駄目だわ。本当に私、色々と末期だ。
「ねえ、直澄」
机に突っ伏したまま、指先でちょんちょんと直澄を呼ぶ。
直澄は、ん? と首を傾げつつも近づいてきた。
「ちょっと私にキスしてみてよ」
「おお、ほらよ」
ちゅっとわざわざ音を立てて、唇を押し付けてくる。
コスメを見ていた女性社員たちがドッと笑い出すが、なんともいえない気持ちになる。
「うーん。直澄じゃ、下半身が熱くならないわね」
「お前、こんな場所で下ネタやめろよ。社長がセクハラって、一番やべえだろ」
「だって。欲求不満なのか、キスする夢を見てから変なのよね。でも直澄じゃ、解消できないみたいだわ」
「当たり前だろうが」