うるせえ、玉の輿。
「……あなた、だれ? ジョージさんに何をしてるの?」
受話器の向こうの男の考えが分からず、眉間にしわが寄る。
なぜ私にジョージさんの電話?
私の中では、業平よりは優勢順位が低い。
何をするかわからないと言われて、私が助ける義理はあるの?
――俺、貴方が好きです。
柔らかい笑顔が浮かんだけれど、首を振って振り払った。
『んんー。ジョージくんには何もしたくないんだよね。だから、忠告?』
「なによ、はっきり言いなさいよ」
怒鳴り散らそうと受話器に向かって声を張り上げたその瞬間、電話もメールもしないで業平が帰ってきた。
「麻琴ちゃーん。もー、おかえりなさいのキスしてって言ったじゃない」
「……言ってない。言われてない」
「あら、電話? うちの親?」
業平はカバンを椅子の上に置くと、伊達メガネを外し、ジャケットから携帯を取り出しテーブルに置いていく。
「知らない人。なんか、ジョージさんを酔わせて、何をしよっかなとか、訳分からない発言してる」
「えー。気持ち悪い。私の丞爾くんに? 相手、誰よ」
近づいてきて、受話器を私から取り上げる業平。
私はまだ釈然とできていなかったけど、聞いたとおりに話す。
「私の中で消えたはずの親父の名前を出してた」