うるせえ、玉の輿。


ひー。男がいる。男というものは、突然瓶を投げつけてくるか、意味もなく殴ってくるか、酒が切れて震えてるか、予測不可能な奴らだ。

こっちだっていつでもこのハサミで切りつける仕事の準備はできている。

「業平もいるでしょ。入らせてもらうから」
「直澄には困った奴だな。奥にいるよ。ジョージってやつもいる。一時間誰も入れるなって言われてんだがな」
「そう。ご苦労様」

一時間?
一時間でナニするつもりだったのかな。
「おい、待て」
「……何?」
殴りかかってやる。
すぐにでも殴りかかってやるぞ。
そう思うのに、手が動かない。
どうしたもんか。

「お前、その格好、コスプレか?」
「へ?」

自分の服を見たら、そういえば適当なシャツとジーンズと、業平が用意してくれたピンクのヒラヒラエプロンだった。

「えっと、ナオズミがエプロン着てこいって」
「あいつ、そーゆう趣味かよ!」

スキンヘッドの男がカウンターを叩いて爆笑している。
誤解させたのは申し訳なかったけど、あとで本人に謝っておこう。
エプロンプレイ大好きなナオズミさんに、まずは会わないと。

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