うるせえ、玉の輿。
店から出て、酔っぱらってへろへろなジョージさんを二人で、引きずられている宇宙人みたいな持ち方で運びながら、業平がそういった。
空は、天ぷらそばのかき揚げみたいな、いびつで丸くない月が浮かんでいる。
私と業平と、宇宙人の影が長く道路に伸びる。
「よくわからないけど、野性の勘ってやつ? なんか業平が危ない気がしたの」
「直澄なんて、ちんこ蹴り上げたらかっこつけしいだからそれ以上はしてこないわよ。あいつ、プライドが高いから拒まれたらそれ以上無理強いできないのよ」
「仲が良いことで」
でもこれで業平の魅力が男にもわかってしまった。
「それにしても、酔っぱらう丞爾くんは可愛いけど」
「そう? 全然頼りにならなくてがっかりよ」
「一番は、男しかいない店にはさみをもって乗り込んでくれた麻琴ちゃんよね」
天ぷらそばみたいなお月さま。
そばを食べるのは、何かのフラグなのか。
いつもそばを食べようとすると何か見えない力に邪魔されている気がする。
後ろの助手席にジョージさんを寝転がせて、なぜか空気が違うことに気づいた。
助手席のドアを開けられても、なぜだろうか。
中に入るのがためらう。
「業平さん、貴方の今の気持ちは?」
「え。言っていいの?」