うるせえ、玉の輿。
――

ただ酔わされる前に聞かされた、俺の父親の話だけはやはり少し驚いた。
今更どうなるわけも、財産を奪えるわけもない。
少しでも母に愛情が残っているなら、誕生日に花束ぐらいは送ってくれたら嬉しいけど、それぐらいだ。

「うう……っ……ううっ」

冷たい水が頬に落ちてくる。
だれか子どもが泣いている。

「ひっく……っううっうえっ」

泣きじゃくる声が、俺の頭上から降ってきて、そして着ていた服に手をかけだした。

それはもう、ボタンがはじけ飛ぶぐらい、激しい勢いでバリバリと左右に引き裂かれ、ハサミの音がする。

「……え、なに?」

身体を少し起こして音の正体を確かめる。

すると鼻水を垂らしながら、一心不乱に俺の服を切っている麻琴さんがそこにいた。

「ひっ……え、なんで?」
「いま、い、いまから、私とエッチして!」

< 176 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop