うるせえ、玉の輿。


彼女の手を掴んで、優しく引き剥がすと縋るような眼で見上げられた。

「玉の輿に乗ります?」

もう一度聞く。
虹村社長の前で聞くのはずるいのかもしれないけど、そう聞く。
すると彼女は首を振った。

「さんぴーでいいから、離れないで」

ポロポロと泣く。初めて人に縋っている不器用な彼女を、虹村社長が後ろから抱きしめて俺から引き剥がした。

「ごめんなさいね、丞爾くん」
「俺、最初から言ってましたよ。二人はどんな関係なんですかって」
「そうね」

「うーっ」

後ろから抱きしめられて、麻琴さんはポロポロ泣いて腕に噛みついていた。
腕の中から逃げ出したいのに、虹村社長が大切だからそんなことできないって様子。

「話し合いましょうか、麻琴ちゃん」

でもきっと火のついた虹村社長なら、もう観念してくれるはずだろう。

「聞き分けのない麻琴ちゃんは、ベットの中で話しましょうか」

布団をすっぽり頭からかぶった二人に、少しだけ不安と興味はあったものの、お邪魔虫は退散する。
これでいいんだ。
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