うるせえ、玉の輿。
抱きしめながらベットに二人で沈む。
横に倒れた私は、腕枕される形で倒れたけれど、後ろの業平を見てあげられない。
夢だ。悪夢だ。最悪な夢だ。
業平なら、どっかの令嬢と結婚しろよ。
この際、ジョージさんでもいいよ。
私以外の人が、今すぐ白馬に乗って業平を救いに来て。
「観念しなさいよ、私はしたわよ」
「……来世、普通の家庭に生まれてきたら、観念してあげる」
「こーらー。いい加減に腹をくくりなさいよ!」
ぐりぐりと頭を掻き混ぜられて、情けなくて涙が出そう。
何もないんだよ。
業平の横に並べるような、綺麗な部分が私には何もないんだよ。
業平の好きな人を汚したいって思ったり、おじさんとおばさんのために子供を作ろうとしたり、業平以外の男なんて皆、死んでしまえって思ってた時期だってある。
産んでくれた親と、酔っぱらって生活保護費を酒に帰る親父を、心の中で何千回殺したかわからない。
私は頭のてっぺんからつま先まで、汚いんだよ。
「麻琴ちゃん、こっち向いて」
「断る」
ベットが軋んで、業平の腕が私の下から抜けると、覆いかぶさってくるのが分かった。
耳元で甘く、囁くのが分かった。
「私、貴方が思ってるような、聖人君子じゃないからね」