うるせえ、玉の輿。

「こう、ベルコンベアを流れてくる部品に差し込む感じで、事務的にやらない?」
「やらない」
「じゃあ、し、しない。自分の部屋に帰る」

無理だ。
私が少女漫画みたいに、キラキラな世界で裸になって業平に『綺麗よ、麻琴ちゃん』て言われるの無理。バッグに薔薇が浮かぶような雰囲気無理。私のバッグは死神とか人食い花みたいなのしか浮かばないだろ。
無理無理。
子作り、無理くない?
病院で体外受精お願いするしかない。

あー、危なかった。
経験全く一ミリもない私には、無理だった。
思い出したくもないレベルで無理だ。
うんうんと、頷き納得したのにドアが開かない。

引いているのに、開く気配がない。
上を向くと、ドアを押さえている長身イケメンキラキラ男が、私を見降ろしていた。

「残念。逃がさないわよ」
「ひいいい」

嬉しそうに微笑む変態こと、業平が私を見ている。

「今日はしないわ。貴方、初心者だし。男性恐怖症だし。でも、イチャイチャさせて」
「うーわー。キラキラしてる。眩しい。無理だ。溶ける」

業平に貼りついていた病原菌の私は、今にも溶けてしまいそうだった。

< 187 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop