うるせえ、玉の輿。


「マリア様になりたい。あの人、処女で神様の子が勝手に宿ったんでしょ」
「私のマリア様ね」
「業平は私にとって神様みたいな存在だから、朝起きたら、宿ってたらいいのに」

馬鹿なこと。
ファンタジーやお伽話でもあるまいし、無理な話だ。
なのに、――業平は悲しそうな顔をした。

「セックスが怖い?」
 爆弾発言。
 でもまさにその通りだった。
 怖い。業平のあれが、どうやれば私に突き刺さるのか、ちょっと怖い。
 もっと精神的な何かがえぐれてしまいそうで、怖かった。

「怖い癖に子作りね。まずはお互い愛情を確かめたってからじゃないと」
「うん」
「あとね、麻琴ちゃんは今まで、私が味わったことのない、辛い過去が沢山あるでしょ」
「うん」
髪を撫でられてうっとりと目を閉じる。
気持ちがよかった。
「貴方は誰よりも、人の痛みが分かる。だから、きっと素晴らしいお母さんになるわ」
頬を撫でられて、あやすように、甘やかされるように言われた。
「貴方は、誰よりも素晴らしいマリア様になれるの。だから、ゆっくり貴方のペースでいきましょう」
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