うるせえ、玉の輿。

業平が――。


ああ。もうだめだ。
私、この人を陶酔するほど好きだ。
私のことをここまで勘違いして好きになってくれて、胸が苦しい。
業平が思うほど私は可愛くもなれないし、強くもないし、性格もよくならないけど。

でも。

「業平、ほんとうに私のペースで、いい?」
「ええ。いいわよ。何年でも待つわ」

ふふって柔らかく笑うので、その唇に私は自分の汚れた唇を押し付けた。

「私のペース」
「……麻琴ちゃん?」
「今、すっごく業平が好きで胸が苦しい。今なら」

恐怖より、幸福が勝ちそうだ。
私がそう笑ったら、業平が部屋を真っ暗にしてくれた。

さっきのやまほどあったローションやゴムを用意するのかなって思ったけど、そのままキスしながら布団に二人でもぐりこんだ。

何度も降ってくるキスがくすぐったくて笑っていたら、業平の手が私の服に伸びて、キスしながら器用に脱がせていく。

ああ――。ああ、ああ。
好きだ。どうしよう。好きだ。
やめてほしい。やめないでほしい。
好きだ。ごめんね。好きだ。
汚れてうまれて、好きで、汚れてて、ごめん。

沸騰しそうな頭の中は、謝罪と告白と、涙、涙。

馬鹿みたいに涙がこみあげてくるのに、幸せだった。
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