うるせえ、玉の輿。
「……この下着、全部業平チョイスのやつなのに」
「似合ってるわよ。可愛いわ。けど、着て」
「……全部脱ぐしもう二度と着ないし」
ぽいぽい脱いでバスローブを羽織ったら、また業平が深く溜息を吐いた。
「あのね、麻琴ちゃん」
「え、きゃっ」
引き寄せられ、ベットに倒れた私の上に業平が乗っかった。
「私、――バイよ? で、あなたは可愛い女の子。こんな状況で襲われてトラウマになってもいいの?」
流れ落ちてくる髪はしっとりと濡れて、小さな雫を落とす。
風呂上がりの化粧をしていない業平は、顔が知らない男の人のようだ。
マスカラしないでも睫毛が長いし、奇抜な色を塗らなくても唇は綺麗で薄くてセクシーだ。
12時の魔法が解けたお姫様が、素敵な王子様に戻ったみたい。
押し倒されたこの先を、私は今まで経験したことがない。
あの唇がどこを這い、あの声がどんな愛を囁き、あの指先がどのように私に触れるのか、未知の世界だ。
「驚かせてごめんなさいね」
フッと笑うと、私の額に口づけて上から退いた。
「さーて。化粧水化粧水。あとパックもしとこうかな。今日、甘いケーキ食べちゃったし」