うるせえ、玉の輿。


「……えっ」
ドレッサーの前で、前髪をピンで止めるとコットンに化粧水をつけて顔にペタペタ塗りだした。

鏡越しの私が見ていると、微笑んでくる。

「30過ぎるとお肌が曲がるのよ」
「今、すっごく期待したのに! すっごい期待したのに!」

後ろから鏡越しにバスローブを脱いで、蝶のようにパタパタさせると噴出した。

「そんな色気のない誘い方辞めて頂戴よ!」
「襲えよ! 襲って来いよ! こら!」
「いやよ。既成事実作ったら、明日には婚姻届け出されてそうだもの」

パックを顔に張り付けて、足を念入りにケアし出した。

「だってさあ、麻琴ちゃんだいたい、子どもの作り方知ってるの? 裸で寝たからって子どもはできないのよ。あのね、おしべとめしべ」

言い終わらないうちに私がベッドから飛び蹴り、いやドロップキックをしたのは言うまでもない。
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