うるせえ、玉の輿。

ひいい。めっちゃ雄くさい。
業平は甘い、ヴァニラ系の香水をつけるけど、彼からはほどよく男らしい匂いがする。

顔をあげると、190センチはありそう。昨日、業平が抱きしめていたクマのぬいぐるみが195センチだけど、ほぼ変わらない。

「草むしりするって言ってたので差し入れみたいです。クール便もあります」

笑ったら顔がくしゃっとなる。体に似合わず大きな瞳、似合わないピンク、ちょっと垂れ目の童顔で、確かにちょっとだけ可愛い。
肉食系の体系した小動物みたい。

「あ、あのーこちらにサインを」
「はい。ありがとうございます」

受付のカウンターに置かれた段ボール二箱を見て、絶望する。
これ、台車持ってこなきゃ無理かな。

「俺、中に運びましょうか」
「えっいいんですか、じゃないくて、いえ、お仕事忙しいので大丈夫ですよ」

危ない。一瞬、ラッキーと思ってしまった。
この人、すっごく人懐っこい。それに顔色を見るのが上手いのか、気を使える人なのかあ。

「大丈夫ですよ。二個とも重いんです。案内お願いします」
「あ、じゃあ会議室に」

有無も言わさない強引な部分もある。

「あのう」
「はい」
「業平とはどういった関係でしょうか」

騒がしい会議室の前、ドアを開けようとしていた私は手を止めて聞く。
すると、彼の大きな目がこぼれそうなほど大きく見開いた。
< 40 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop