うるせえ、玉の輿。


「いや、変な意味で聞いてるわけじゃないです。変な関係になってほしいけど」

「虹村社長は、うちと契約してくれてる大事なお得意様です!」
「いや、えっと、そんなことが聞きたいんじゃなくて」

「四歳しか違わないのに、片や社長、片や奨学金返済にひーひーしてる俺。全然学歴も地位も違うのに、すっごく親身になってくれるし、差別もしないし、素敵ですね。顔も綺麗で女性にもてそうで羨ましいです」

「ほ、ほう。でもファッションとかちょっと奇抜じゃない?」

今日は真っ赤なサングラスにちびまる子ちゃんみたいな長さの紫のウィッグに、ピンクのアイシャドウしてたよ。リップは何色がいいかって聞かれて無難な色にしなって言うしかないぐらい、センスが分からない。

フリルのついたブラウスに黒のジャケット着て、外車でさっさと消えていったし。

「化粧品会社の社長ですからね。感性が繊細なんじゃないですか。って、俺より、きっとあなたの方が彼のことを知ってますよ」

「……そう?」

毒気のないしゃべり方に、人懐こい笑顔。
私もきつく縛られていた緊張と警戒がするすると、リボンのように解けていく。


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