うるせえ、玉の輿。



「色々と不躾に質問してごめんなさいね。ちょっと騒がしいけど、会議室の中の人たちは皆、良い人だから」
ドアを開けると、中でピザを食べていた社員たちの視線がこちらに集中する。
「あの、フロイラインって会社から、差し入れです」
「中は、桃とレモンと蜜柑のシャーベットです! こっちは試供品って言ってました」

「んま! フロイラインって高級ブランドじゃないの」

会議室の隅に置いた段ボールの前に女性社員が集まってくる。
私はサインして、彼にペンと共に返した。

「ありがとうございました」
「いえ。良かったら、うちの宅配ご利用くださいね」

爽やかに去っていく背中を、じっと見る。

「あら、日焼け止めと化粧水。草むしりで日焼けした肌の応急処置に、ですって」
「このシャーベット、駅前にできたケーキ屋さんのシャーベットみたい。お洒落な差し入れね」
「フロイラインって取引先だったかしら」


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