うるせえ、玉の輿。
どうやって出てきたんだ、と言いたかった。
が、彼の手に握られたドアノブと傘が何も言わなくてもいいと物語っている。
傘ぐらい、彼の握力の前では鉛筆のようなものなんだ。
「あの、業平は?」
「え……っと、寝てます」
言葉を濁す彼は、まだ火照った熱い吐息を吐く。
どうやらお酒は抜けていないらしい。
お茶を差し出すと、ぺこんとお辞儀して一気飲みした。
「驚きました。虹村社長って、上半身、すっごく綺麗でした。男の裸を綺麗っておかしいんですが」
お、業平、一応脱ぐまでは進んでいたのか。そして彼も一応、体には反応したのかな。
「業平は、心も体も綺麗だよ」
「そうみたいですね」
「お茶お代わりは?」
「お願いします」
このままスローペースでもうまくいきそうな気がして鼻歌を歌っていたら、ジョージさんから熱い視線を向けられた。
「麻琴さんは、虹村社長がお好きなんですか?」